脳と意識を変容させるサイケデリック物質の種類について

こんにちは。

今回は、サイケデリック物質の種類についてお話ししていきます。

脳と意識を変容させる物質が持つ特性と治療の可能性について、サイケデリック物質の種類や歴史から私たちの脳や意識への影響まで解説していきます。

古代の儀式から現代医学までを通して、その歴史と科学、医療用途の可能性に至るまでを探求していきましょう。 

・サイケデリック物質の種類

LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)

サイケデリックと聞くと、多くの方が思い浮かべるのがLSDではないでしょうか?

この物質には、とても興味深い逸話があります。

1938年、スイスの科学者アルバート・ホフマン博士が麦角菌(ばっかくきん)からLSDを半合成しましたが、発見当初は、その強力な精神作用には気づきませんでした。

ですが、1943年に博士が実験中に微量のLSDを誤って摂取したあとに、強い精神作用を持ったまま自転車で帰宅中に強烈なサイケデリック体験をしたことから「バイシクルデイ」としてサイケデリックの歴史的な日になりました。

LSDの驚くべき点は、その効力の強さです。

100マイクログラム、つまりごく微量であっても6〜12時間もの強力なサイケデリック体験を引き起こします。

脳内では、主にセロトニン受容体、特に5-HT2A受容体に作用して色鮮やかな視覚変容、思考変化、自我の溶解感などを経験するでしょう。

1950〜60年代初頭にかけて、LSDはうつ病や依存症治療、創造性研究で注目されましたが、1966年に社会的・政治的要因から規制されることになります。

しかし、再び医学研究の場に戻ってきたLSDは、その治療の可能性について再評価されています。

シロシビン(マジックマッシュルーム)

このキノコは、人類の歴史と深い関わりがあり、中南米の先住民族はシロシビンを数千年前から神聖な儀式で使用してきました。

アステカ人は、これを「テオナナカトル」つまり「神々の肉」と呼び精神的啓示を受けるために用いていました。

そして、西洋世界にこの神秘的なキノコが広がるきっかけは1957年のことでした。

銀行家のR・ゴードン・ワッソンがメキシコのシャーマンであるマリア・サビーナから儀式の教えを受け、その体験を『ライフ』に投稿したことから広く知られるようになります。

シロシビンが体内に入ると、すぐにシロシンと言う活性物質に変化し、LSDと同様に5-HT2A受容体に作用します。

効果もLSDと似ていますが、持続時間は4〜6時間とやや短く、より大地に根差した感覚や、より温かみのある体験をすると評価されることが多いようです。

前回の記事でもお伝えしたように、現在シロシビンは治療現場での研究が最も進んでいるサイケデリック物質です。

治療抵抗性うつ病や終末期患者の不安、抑うつ状態を減少させる、穏やかさと短い作用時間から治療に適していると考えられているためです。

メスカリン

ペヨーテやサンペドロなど、特定のサボテン種に含まれるメスカリンは、北米先住民族の精神文化と深く結びついています。

彼らは何千年もの間、ペヨーテサボテンを宗教儀式で使用してきました。

現代のアメリカでは、ネイティブ・アメリカンチャーチが宗教的自由として、今でも合法的にペヨーテを使用しています。

科学的には、1897年にドイツの化学者アーサー・ヘフターによって単離され、1919年に初めてメスカリンの人工合成に成功しました。

メスカリンの効果は8〜12時間と長く、他のサイケデリックと比べて、特に視覚的な効果が鮮やかだと言われています。

化学的には、他のセロトニン作動性サイケデリックとは異なり、フェネチルアミン構造を持ちドーパミンやノルアドレナリン系にも作用するという特徴があります。

医療的な位置づけとしては、先端医療としての研究では注目度は高くありませんが、先住民族の伝統医療では今なお重要な位置を占めています。

DMT(ジメチルトリプタミン)

サイケデリック物質の中で、最も神秘的な存在がDMTです。

この物質は、多くの植物に加えて、実は人間を含む哺乳類の体内にも微量ながら存在していることが確認されています。

このため「内在性サイケデリック」とも呼ばれ、夢や深い瞑想状態にも関係しているという仮説もあります。

純粋なDMTは、15〜30分の短い作用ながら強烈な視覚体験と、別の世界に旅をするような体験をするのが特徴です。

一方、南米のアヤワスカと言う伝統的な飲み物に含まれるDMTは、MAO阻害薬と言う消化酵素の働きを抑える成分と組み合わせることで分解を防ぎ、4〜6時間の持続効果をもたらします。

アヤワスカは、アマゾン流域で何千年もシャーマニズムとしての治療に使用されてきました。

現代では、この古代の知恵が依存症やPTSD治療の可能性があるとして研究されています。

MDMA(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン)

ここまで紹介してきた物質とは、少し異なるカテゴリーに分類されるのがMDMAです。

厳密にはサイケデリックではなく、共感性や開放性を高めるエンパトジェンと呼ばれる精神活性物質の一分類です。

1922年にドイツの製薬会社メルクによって合成されましたが、長い間、心理的効果には注目されてきませんでした。

1970年代にアメリカのアレクサンダー・シュルギン博士によって、その独特の効果が心理療法の可能性として再発見されることになります。

MDMAの作用機序は、他のサイケデリックとは異なります。

主にセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンの放出を増加させ、脳内のオキシトシンレベルも上昇させます。

これにより、共感性の増大・感情的開放性・社会的な結合の促進が起こりますが、これまでに紹介してきたサイケデリック物質のような強い変容は少ないのが特徴です。

1970〜80年代初頭までは心理療法の補助としてMDMAの臨床使用が行われてきましたが、1985年のパーティードラッグとしての一般社会での乱用により規制を受けることになります。

しかし、現在においてはPTSD治療の「ブレイクスルーセラピー」に指定されており、近い将来の医療承認が見込まれています。

ケタミン(解離性サイケデリック物質)

最後に紹介するのは、もともとは麻酔薬として開発されたケタミンです。

通常の麻酔薬よりも少ない量で使用することで、サイケデリック的な解離状態をもたらします。

化学的にはNMDA受容体の拮抗薬として作用し、「Kホール」と呼ばれる強い解離体験を引き起こすことがあります。

最新の医学研究では、ケタミンのうつ病に対する即効性に注目が集まっています。

実際に、2019年には「S-ケタミン」が「スプラバート」と言う製品名でサイケデリック関連薬として初めてFDAに承認されました。

現在でも、治療抵抗性うつ病やPTSD、慢性痛などへの応用研究が行われています。

サイケデリック物質がもたらす脳への作用

これまでに紹介してきたサイケデリック物質は多様ですが、脳に対しては驚くべき共通のパターンで作用します。

最新の研究では、サイケデリックは脳のデフォルトモードネットワークと呼ばれる自己意識や内省思考を担う神経回路に影響を与えます。

この活動が一時的に抑制されることで、普段は交流のない脳領域間に新たな接続パターンが形成され、脳の柔軟性が向上します。

さらに興味深いことに、サイケデリック体験が脳細胞の成長を促進するタンパク質を増加させ、神経細胞同士の新たなシナプス形成を促進することもわかってきました。

この神経の可塑性の増加が、たったの一度、または数回の体験で持続的に治療効果を維持するとして注目を集めています。

サイケデリック物質は、その歴史的起源、科学的特性、そして脳と意識への作用において多様性に富んでいます。

LSD、シロシビン、メスカリン、DMTなどは古典的サイケデリックとして5-HT2A受容体に作用します。

また、MDMAはエンパトジェンとして共感性を高め、トラウマ治療に可能性を示しています。

そして、ケタミンはNMDA受容体に作用して、うつ病治療にも応用されています。

これらのサイケデリック物質への適切な理解と科学的な研究が、精神医療における革新的な治療法の発展につながると期待されています。

精神医療の新たな扉を開くサイケデリック物質について学ぶことは、心と脳の神秘をより深く理解する旅の始まりかもしれませんね。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

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