PMS・子宮疾患を防ぐためにエストロゲン代謝ルートを整える方法
こんにちは。
今回は、遺伝子変異とエストロゲン代謝を整えてPMSや子宮疾患を防ぐための栄養戦略についてお話しします。
「生理前になると、イライラや頭痛で寝込んでしまう」。
「生理痛が重くて、鎮痛剤が手放せない」。
「子宮筋腫や子宮内膜症が見つかった」。
多くの女性が、こうした不調を女性の宿命として「体質だから仕方がない」と諦めてしまっています。
しかし、精密栄養学の視点から見れば、これらはエストロゲン(女性ホルモン)の処理システムがうまく機能しないことによる代謝バランスの崩れと捉えることができます。
生理前の不調はPMS(月経前症候群)と呼ばれますが、本来、生理とは毎月過度な苦痛を伴うものではありません。
女性特有の悩みであるエストロゲンの代謝を、血液データと遺伝子の観点から科学的にひもといていきたいと思います。
「エストロゲンドミナンス」と呼ばれるエストロゲン代謝が滞っている状態の血液データには、いくつかの特徴的なサインが現れます。
まず、最初に注目すべきは「フェリチン」の低値です。
精密栄養学における女性のフェリチンの理想値は50〜80ng/mLで、50を下回ると鉄欠乏と判定されます。
ですが、エストロゲン過剰の女性では10〜20以下にまで低下しているケースもあります。
エストロゲン過剰の状態が長く続くと、子宮内膜が必要以上に厚く育ってしまい、生理での出血が増える、いわゆる過多月経になってしまいます。
その結果、毎月大量の鉄が失われ、重度の鉄欠乏に陥ってしまうのです。
一方、貧血になっているのなら鉄を摂れば良いのでは?というアプローチでは根本的な解決にはなりません。
『なぜ出血がこんなに多いのか?』その原因に目を向ける必要があるのです。
なお、鉄欠乏の背景には過多月経以外にも、溶血性貧血や慢性炎症による鉄の利用障害が隠れているケースもあるため、原因の特定はとても重要です。
血液データで、その次に確認したいのがγ-GTPです。
精密栄養学での理想値は20〜30U/Lで、この値が20を下回っている場合、解毒能力の低下を疑います。
γ-GTPの値は、お酒の飲み過ぎで高くなるというイメージがあるかもしれません。
しかし精密栄養学では、低すぎることでも意味があると考えています。
γ-GTPは、肝臓の解毒能力を反映する指標ですが、エストロゲンは肝臓で分解される、つまり解毒が行われる仕組みになっています。
この数値が低いという事は、解毒に必要な酵素やグルタチオンが不足しているサイン、つまり使い終わったホルモンをスムーズに処理できず体の中に居座り続けている状態です。
そして、三つめのサインがMCVの異常です。
MCVとは、赤血球の大きさを示す指標で、精密栄養学における女性の理想値は88〜92fLです。
エストロゲンの代謝にはビタミンB群が大量に消費されるため、PMSがひどい人はB群不足になりやすく、MCVが92以上の高値を示すことも少なくありません。
そして、エストロゲンは「作る」ことと同じくらい「捨てる」ことが大切です。
役目を終えたエストロゲンは、肝臓で2段階の工程を経て無毒化されて、最終的には便や尿として体外に排泄されます。
この2段階を「フェーズ1」と「フェーズ2」と呼んでいます。
まずフェーズ1では、エストロゲンが水酸化という化学反応を受けて、3つの代謝産物のいずれかに変換されます。
①2-OH(善玉)
これは安全で、がんリスクを下げる方向へ働きます。
②16a-OH(悪玉)
こちらは細胞を増殖させる作用が強く、乳がん・子宮筋腫リスクを高めてしまいます。
③4-OH(最も危険な悪玉)
DNAそのものを傷つけて、発がんの原因になり得ます。
エストロゲンが3つのうちどのルートに進むかは、栄養状態と遺伝子によって決まるのです。
実質的には、このフェーズ1が運命の分かれ道であると言えるでしょう。
続いてフェーズ2です。
ここが無毒化の仕上げになります。
フェーズ1で変化した代謝物に、「メチル基」と呼ばれる小さな分子をくっつけて完全に無害な形に変えるステップです。
ここで中心的な働きをするのが「COMT酵素」で、この酵素はメチオニン回路で作られるメチル基を消費しながら、代謝物を処理していきます。
この処理が滞ると中間代謝物が体内に溜まり、酸化ストレスの温床になってしまいます。
フェーズ1でどんなに善玉ルートを通っても、フェーズ2で渋滞を起こせば意味がなくなってしまうのです。
エストロゲンの運命を握る遺伝子は2つあります。
1つ目は「CYP1B1」遺伝子です。
この遺伝子はフェーズ1で働く酵素の設計図で、通常はエストロゲンを水酸化して代謝産物に変換する役割を担っています。
ところが、活性が高すぎる変異を持つ人の場合、エストロゲンを危険な4-OH、先ほどの悪玉ルートへと優先的に誘導してしまいます。
この変異がある人にとっては、代謝ルートを善玉方向に修正する栄養戦略が、乳がんや子宮疾患のリスク管理のために欠かせません。
2つ目が「COMT遺伝子」です。
COMTはドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の分解に関わる酵素ですが、実はエストロゲンの解毒にも深く関わっています。
COMTにはWorrier型、つまり分解が遅いタイプの変異があり、このタイプの人はエストロゲンの無毒化にも時間がかかります。
その結果、ホルモンが長く体内に留まりやすく、PMSや乳房の張りを感じやすい傾向があると言われています。
ここまでの話しをまとめてみましょう。
あなたの不調は、女性ホルモンが多すぎるわけではなく、悪い形に変身して居座っていることが原因かもしれません。
対策方法は明確です。
代謝ルートを善玉へと誘導し、出口となる排泄を確保するのです。
まず取り組みたいのは、アブラナ科の野菜を積極的に摂取すること。
ブロッコリーやキャベツに含まれるDIM(ジインドリルメタン)やI3C(インドール-3-カルビノール)は、エストロゲンの代謝を善玉ルートへと導いてくれる成分です。
次に重要なのは、マグネシウムとビタミンB群の補給です。
フェーズ2でCOMT酵素を動かすためには、「マグネシウム」とメチル基の材料となる「葉酸」「ビタミンB6」「ビタミンB12」が不可欠です。
これらを十分に補うことで、渋滞している解毒の流れをスムーズに整えることができます。
そして3つ目は「入れない」という戦略です。
プラスチック容器や農薬に含まれる化学物質は、体内でエストロゲンのフリをする、いわゆる環境ホルモン(内分泌撹乱物質)と呼ばれるものです。
解毒能力が高くない遺伝子タイプの人の場合、こうした化学物質をできるだけ体内に入れないことが大切です。
具体的には「プラスチック容器をガラス製品に変える」「食材はなるべくオーガニックを選ぶ」、こうした日常の小さな選択の積み重ねが、あなたのエストロゲン代謝を整える確かな戦略になるのです。
PMSや生理痛は、我慢するものではありません。
血液データと遺伝子を手がかりに、自分の体に合った代謝の整え方を見つけていきましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございます。

